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続・『CDエイシアン・ドール』制作てんまつ記
数年前、私たちは「DohYoh」というCDを作りました。日本の童謡を編曲し演 奏したこのCDは、私の日本人の祖母に対するオマージュというか、自分の日本のルー ツに対する思いを込めたものになりました。そして、次なる仕事として、今度は中国 のルーツ、現在106歳になる父方の祖母を主題にしたCDを作りたいと思うように なっていました。折りもおり、「家族の肖像」は私たちが今、CDの制作を通してやっ ている主題と重なり合っていて、テーマ曲は私たちが制作しようとしていたCDの内 容として、そのまま使えるものだったのです。今回は「家族の肖像」のテーマ2曲を 収録したCD「エイシアン・ドール」の他の曲に関してお話ししてみたいと思います。
「エイシアン・ドール」について 「家族の肖像」の2曲がテーマ的にも内容的にもとても重いものになってしまったの で、この曲の編曲はできることなら明るく快活なイメージを持たせたいと思いました。 私は何気なく中学2年生になる息子に「編曲してみる?」と声をかけました。中学2 年とはいえ、すでに私が使っている録音機材をある程度までは使いこなしていました。 しかし、ここまで編曲できるとは思いもよらなかったことです。私がコンサートの旅 から帰ってくるともうすでにあらかたサウンドは出来上がっていました。プロが使う ようなシンセサイザーやコンピュータやデジタルミキサーを中学2年生が使いこなし てしまう姿は、父親としては嬉しいわけですが、時代の流れというものを感じ、ある 感慨を持たざるを得ませんでした。彼は他の曲のサウンドオペーレーションもやって くれています。ジャケットの祖母の写真の片隅に祖父の両親の肖像が写っていますか ら、CD「エイシアン・ドール」にはなんと5つの世代が参加していることになりま す。
この曲に関して是非やりたいと思っていたことがありました。それは祖母の声を始め
様々な現実音を入れたいと思ったことです。そして全体を通して一つの物語が展開し
てほしいと思ったのです。まず電話の祖母の声は104歳のお誕生日に日本から電話
をかけて収録したものです。祖母は「永燦(私のこと)なの、永燦だね。元気なの。
いつ香港に帰ってくるの、、、。」などと広東語でしゃべっています。私はこの声を
聴くといつも、ついウルウルしてしまいます。
「光君のプレゼント」について
「Wave Dancer」「Sea Wings」について
「知られざる子供たち」について
「Waltz for Manta」について
「River of Lives ー黄河ー」について さてCDの制作は、作曲、編曲、演奏、録音だけにとどまるわけではありません。ジャ ケットの制作も大変重要な作業です。その作業はサトワミュージック運営上のパート ナーであり、かつデザイナーである、私の奥さん、美枝子さんの役割です。デザイン はCDの主題、収められる曲などの資料を基にイメージされることになります。特に 今回、私はこのCDのために、高校時代に初めて香港に行ったときの体験から「香港 ジャーニー」という雑文を書いていました。 いろいろアイデアを考える中でその文章の背景とCDの裏側に、昔の香港の写真が、 出来れば私の文章にでてくる、ジャンクという古い小さな帆船が写っているものがほ しいということになってきました。しかし、いろいろ資料を探してもイメージ通りの ものが見つかりません。美枝子さんは自ら香港に行って写真を撮ってくることにしま した。1枚や2枚の写真のためにわざわざ香港まで行くところがこだわりということ でしょうか。しかしまさか、時代とともに廃れてしまったジャンクが撮れるとは思っ てもいませんでした。なんと奇跡は起こるものです。美枝子さんが港に向けてカメラ を構えると、何処からともなく例の帆船、ジャンクが現れ、港を横切っていくではな いですか。後で知ったことですが、そのジャンクは、あるホテルが観光客のために、 週に一回、一時間だけ港をセールすることになっていたのです。何のインフォメーショ ンもなく、一泊だけの取材旅行で、たまたまその時間と場所に居合わせることが出来 たのですから、宇宙のサポートと言っていいでしょう。高層ビルがそびえる現代の香 港を背景に、一隻の古い帆船が港を横切っていく写真は、私の香港に対する思いがそ のまま映し出されているようでした。 すべて材料がそろい、ジャケットのイメージも固まりました。基調の色は、香港の人 にとっておめでたい色、赤です。同じ赤でもいろいろあり、この赤に決めるにも時間 がかかりました。前面には私が撮った祖母の写真。それをトレーシングペーパーで包 み、さらに中華風の格子戸の向こうに祖母が見えるようにしました。この格子戸のパ ターンを決めるのもとても大変な作業だったようです。しかも、この格子戸のパター ンを紙から抜くのはすべて手作業なのです。その作業のためにたくさんの友人たちが かり出されました。この場を借りて感謝します。CDレーベルの中華風の金色のパター ンもとてもこったものになりました。パッケージのどこをとっても思いが込められた ものになりました。 こうしてようやくCDは一つの形を取り、みなさんに届き、聴いていただけるものに なるのです。CDの制作は起草してから形になるまで長い旅のようです。その旅では いろいろな出会いやサポート、ハプニングや奇跡、学びによって、導かれていきます。 この文章に書ききれなかったこともたくさんありました。いろんなことがあり、思い もたくさん込められれば、それだけこのCDに対する愛情も深いものになります。
1999年 ウォン・ウィン ツァン
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