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1998年、約半年間、一切のスケジュールを入れずに、 精神的にフリーな状態に身をおき、
ただひたすらピアノを弾くだけの毎日を過ごした時期のコメントです。


雨が降ったり晴れたり、めまぐるしい気候の中にも、 夏の気配が日毎に強くなっていくのが感じられます。 皆様、お元気でいらっしゃいますか。 その後、なんの連絡もせずにいましたので、 きっとみなさんも私どものことは忘れかけていらっしゃることと思います。 そこで近況をお知らせしたくワープロを打っています。

私がCD「フレグランス」をリリースしましたのが88年の12月ですので、 今年でソロ活動を初めてから10年になろうとしています。 この10年、実に様々なことがあり激動の日々でしたので、 私どもには20年も30年も経ったように思えます。 その間、皆様にはご支援いただいたり、ご心配をおかけしたり、助けていただいたり、 ご迷惑おかけしたり、ご無礼したりで、ちょっと考えただけでも 恐縮して冷や汗が出て身が縮む思いでございます。 とにもかくにも死なずにここまで何とかやって来られたのは皆様のおかげだと心から感謝しています。 ありがとうございました。 そして去年には、「家族の肖像」のテーマ音楽を担当したり、CDを二枚リリースしたり、 コンサートも50回ほどやらしていただき、CDの売り上げも年間で2万枚以上と、 インディーズレーベルとしては異例な数字を記録し、さとわミュージック創設以来、 一番忙しい年となりました。

しかし、そうした中にあって、私は自分の音楽が徐々にエネルギーダウンしていることを感じていました。 精神力や体力が消耗し、特にピアノソロの内容に迷いがあり、解決を見いだせないままスケジュールに追われる日々が続きました。 そして去年の11月、「アイシアンドール」の制作の最終作業を終えた頃「そろそろ自分自身にフォーカスする時期が来ましたね」と言う内なる声が聞こえてきました。

私にとってCD「Doh Yoh」は母親のルーツを、CD「エイシアンドール」は父親のルーツをたどり、先祖たちに思いをはせ、今、ここに自分が生かされていることを確認し、今をいきることをあらためて決意するという側面を持っていました。 そしてその作業が終え、今度は自分自身の内側を見つめる番がやってきました。
一切の予定、スケジュールを入れずに、精神的にフリーな状態に身をおき、ただひたすらピアノを弾くだけの毎日を過ごすこと。 そして録音した自分の演奏を注意深く観察しながら、音楽が自分を通してなにをなそうとしているのかをくみとり、音楽を再構築していく。 そのような作業を充分な時間をかけてやって行かなくてはいけない。 私はやっとその時期が来たかという思いでした。 以前からそうしたいと思っていましたからとてもワクワクする気持ちと、同時に、脆弱な心は怖じけずいてもいました。

そして今年、瞑想合宿から帰ると、ピアノを弾きつづけ、録音したものをプレイバックし、後は瞑想と散歩、食事をして寝るだけというストイックな毎日が始まりました。ストイックと言うと無理にやっているように聞こえますが、ピアニストがなんの気兼ねもなく本当に自由な気持ちで音楽をやれるのですからこんな幸せなことはありません。 もちろん苦しいときもありました。 はじめは挫折の連続で出口の見えないまま1ヶ月半が過ぎていきました。 しかしそんな苦しい状態の中でも音楽の正面に向き合っている喜びをかみしめていましたし、やめたいとは一度も思いませんでした。 2月半ば過ぎた頃、ようやく色々なとらわれていたものから解放され始めると同時になにかが見えてきてました。 そして3月下旬までの間に、ほんの数曲ではありますが、自分を超えた何者かに身をゆだねるような瞬間を体験することがありました。

3月が終わろうとする頃、まだまだレコーディングを続けたいと思う気持ちでいっぱいでしたが、これ以上続けることはかえってなにかを失う結果になると感じました。 また近い時期に再度、ロングレコーディングに挑戦することを心に決めて、今回のレコーディングに終止符を打ちました。 この3ヶ月の間の体験と得られたものは自分にとって実に大きなものがありました。

さて、4月5日はストイックな生活の反動なのか、本をむさぼり読んだり、カメラをいじくり回したり、針穴写真機を作ったり、絵を描いたり、ライブハウスに音楽を聞きに行ったり、新しいコンピューターや機材を買い込んだり、息子とジャムセッションをしたり、美枝子さんと旅行したり、思いつくままとても忙しく遊びました。

そして6月9日、突然、活動モードにスイッチが入りました。 思いついたコンサート会場に電話をしたら本当にいい日だなと思える日がたまたま空いていて、まるで私たちのためにその日が空いているとしか思えませんでした。 しかも一本も、、、。 10月にはピアノソロのコンサート、12月には映像とピアノ、そしてウォンウニット、来年3月には私の親しいアーティストが多数出演する「さとわフェス」を企画します。どのコンサートも頭の中でイメージングできてしまいました。 是非みなさんにも来ていただきたいと思っています。

そして10月2日のソロピアノコンサートを皮切りに全国でも徐々にコンサート活動を再開したいと考えております。 これからはもっと一つ一つのコンサートを大切に、一回一回みなさんと喜びを分かち合えるようなコンサートを重ねていきたいと思っています。 よろしくお願い致します。

8月下旬か9月上旬には今回レコーディングしたピアノソロをCDにしてみなさんに聴いていただけると思います。 ソロピアノとしては「ムーントーク」「ブリスフルシティ」に次ぐ4年ぶりのリリースになります。 「DohYoh2」もレコーディングが進んでいます。 この夏には息子の美音志君とレコーディングを進めるつもりですし、エリックサティのCDも作りたいし、 ジャズのCDも秋ぐらいに進めたいと思っています。 民族楽器を使ったレコーディングもやりたいし、、、。 やりたいレコーディングは山ほどありますがコンサート活動と時期を重ねることが出来ないのでゆったりとしたペースでやっていこうと思います。

では、、みなさんと再会できる日を楽しみにしています。

1998年6月23日 ウォン・ウィン・ツァン


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